ブログ
記事一覧開発を相談する
2026-07-17

工事台帳のエクセルテンプレート|記入例と作り方・原価と粗利の自動集計

「この工事、結局いくら儲かったのか」が月末になっても分からない——建設業の会社からご相談を受けるとき、いちばんよく聞く悩みです。工事台帳の専用ソフトを検討したものの、月額費用や操作の習得が負担で、結局エクセルに戻ってきたという話も少なくありません。実際、工事件数がそれほど多くない段階では、エクセルの工事台帳で十分に管理できます。この記事では、工事台帳に最低限必要な項目と、エクセルで作るときに後で破綻しにくい設計のコツを、実務目線でまとめました。

工事台帳とは?作成は義務なのか

工事台帳とは、工事1件ごとに「受注額・原価・粗利・入金」をまとめて管理する帳簿のことです。よく聞かれるのが「作成は義務なのか」という点ですが、工事台帳そのものを義務付ける法律はありません。ただし建設業法では営業所ごとに帳簿(請負契約の内容など)の備付けが義務付けられており、また経営事項審査や融資・確定申告の場面では工事ごとの原価資料の提出を求められます。つまり「法律上の名前としての義務はないが、実務上は無いと困る帳簿」というのが正確なところです。何より、工事台帳がないと「どの現場が儲かって、どの現場が赤字か」が誰にも分からなくなります。

業種を問わないお知らせ

工事台帳に最低限必要な項目

工事台帳の役割はシンプルで、「工事ごとに、いくらで請けて、いくら使って、いくら残ったか」を1行で見えるようにすることです。最低限、次の項目があれば成立します。

  • 工事No・工事名・発注者:すべての集計のキーになる番号。明細と台帳をつなぐため、必ず一意の番号を振ります
  • 受注額:契約金額。追加・変更工事があれば分けて持ちます
  • 実行予算:着工前に「原価をいくらに収めるか」を決めた金額。これがないと、進行中に使いすぎへ気づけません
  • 原価の4区分:材料費・労務費・外注費・経費。建設業の原価管理は、この4区分で見るのが基本です
  • 粗利・粗利率:受注額から原価計を引いた残り。数式で自動計算にします
  • 入金状況:請求額・入金済額・未入金額。工事が黒字でも、入金が遅れれば資金繰りは苦しくなります

逆に言うと、最初からこれ以上の項目を盛り込む必要はありません。項目が多いほど入力が続かなくなり、台帳そのものが止まります。

工事台帳のサンプル・見本(完成形のイメージ)

文字だけでは分かりにくいので、先に完成形のサンプルをお見せします。ひな形を探して1から作る場合も、この見本と前述の項目一覧をそのまま写せば形になります。上の項目をエクセルに並べると、こういう1枚になります。

工事台帳のサンプル(エクセル)。工事名・発注者・受注額・実行予算・原価累計・粗利・粗利率・入金済・未入金を1行で管理し、赤字の工事と回収漏れは条件付き書式で自動的に色が付く
工事台帳シートのサンプル(数字はすべて架空です)。赤字の行と回収漏れが自動で色付きになります

見てほしいポイントは2つです。B社の行のように原価が実行予算を超えた工事は、行ごと赤くなる。D社の行のように完了済みなのに未入金が残っている工事は、金額欄が黄色になる。毎回目を皿にして探さなくても、開いた瞬間に「見るべき行」が分かる——これが後述する条件付き書式を使う理由です。

この形をゼロから組む手順を、次の章から順に説明します。先にブラウザで操作感を試したい方は工事台帳のデモをどうぞ。

📗 この設計、作ってあります

下に書く設計をそのまま形にした工事台帳のExcelを用意しています。工事別の粗利・粗利率、材料費/外注費/労務費/経費の4区分集計、実行予算との差額、未入金の色分けまで組み終わった状態です。サンプル5工事分入り、マクロ不使用(¥3,000買い切り)。

工事台帳テンプレートを見る → カード決済・購入後すぐダウンロード

工事台帳の記入例——1行ずつ、何をどう書くか

画像だけでは、どの欄に何を書けばいいのかが分かりにくいと思います。実際の1件を例に、記入例を書き出します。数字と社名はすべて架空です。

① 工事台帳シート(工事1件=1行)

  • 工事No:K-001 通し番号です。この番号で他のシートとつなぎます。工事名で紐づけると表記ゆれで必ず崩れるので、番号を先に決めてください
  • 工事名:田中様邸 新築工事 現場で呼んでいる名前でかまいません
  • 発注者:田中 一郎 様 元請か施主かが分かる書き方で
  • 工事場所:横浜市青葉区
  • 工期(自)/(至):2026-04-01/2026-09-30 日付として入力します(文字列にすると並べ替えができません)
  • 受注額(税抜):28,000,000 税抜で統一します。税込を混ぜると粗利率が狂います
  • 実行予算:23,000,000 受注額から目標粗利を引いた、原価の上限です
  • 原価計/粗利/粗利率/入金済額/未入金:ここは手で書きません。すべて数式で、下の②③から自動集計します
  • 状況:施工中 受注前/施工中/完成/請求済/入金済 から選ぶ形にします

② 原価入力シート(請求書・納品書が来たら1行)

材料の納品書、協力会社の請求書、職人さんの手間賃を、届いた順に1件=1行で積んでいきます。

  • 2026-04-06/K-001/材料費/(株)木材市場/構造材一式/3,200,000
  • 2026-04-10/K-001/外注費/(株)大地基礎/基礎工事/2,100,000

区分は材料費・労務費・外注費・経費の4つから選びます。この4区分がそろっていれば、あとから「外注費だけ膨らんでいないか」を工事別に見られます。

③ 入金管理シート(請求したら1行、入金されたら埋める)

  • 請求日2026-04-05/K-001/請求額8,400,000/入金予定日2026-04-30/入金日2026-04-28/入金額8,400,000

入金予定日は、入金がまだでも必ず入れてください。ここが空だと「予定日を過ぎているのに入金がない」を機械が見つけられません。回収漏れに気づく仕掛けは、この1列に乗っています。

書き間違いやすいところ4つ

  • 工事Noを工事名で代用する:「田中様邸」と「田中様邸 新築」で別物になります。集計が合わない原因のほとんどがこれです
  • 原価計を手で入れる:明細を足し忘れた瞬間に、台帳と明細が食い違います。必ず数式にしてください
  • 受注額を税込で入れる:粗利率が実際より低く出ます。税抜で統一します
  • 合計行を明細の中に混ぜる:SUMIFが合計行も拾って、金額が二重になります。合計は別の場所に置きます

工事台帳の書き方——日々の運用手順(1日5分)

シートの構成が分かっても、「いつ・何をきっかけに・どこへ書くか」が決まっていないと台帳は続きません。書き方はきっかけごとに固定するのがコツです。

  1. 受注が決まったとき(その場で・1分)
    工事台帳シートに1行追加。工事No・工事名・発注者・受注額(税抜)・工期を書きます。実行予算もこのタイミングで入れます。着工後に入れようとすると、もう入れません
  2. 請求書・納品書が届いたとき(届いた日のうちに・1件1分)
    原価入力シートに1行追加。日付・工事No・取引先・区分(材料費/外注費/労務費/経費)・金額(税抜)。ここで工事Noを書き間違えると全部が狂うので、台帳からコピーして貼ります
  3. 請求書を出したとき(出した日に・1分)
    入金管理シートに1行追加。請求日・工事No・請求額・入金予定日。入金予定日は空にしない——回収漏れの検知はこの列が頼りです
  4. 入金があったとき(記帳・通帳確認のタイミングで)
    入金管理シートの該当行に入金日と入金額を埋めます。請求額と違う金額が入ったら、理由(相殺・振込手数料・一部入金)をメモ欄に書きます
  5. 月末に1回だけ見る(5分)
    台帳シートを開き、粗利率が予算より低い工事と、入金予定日を過ぎて未入金の行だけ確認します。全行を眺める必要はありません。条件付き書式で色が付いた行だけです

まとめると、書くきっかけは「受注・請求書が来た・請求した・入金された」の4つだけです。どれも起きたその日に1分で書く。ためて月末にまとめて書こうとすると、原価の拾い漏れが必ず出ます。

エクセルで作るときの設計のコツ

項目が決まったら、次は「どのシートに何を書くか」です。ここの設計で、その台帳が長持ちするかどうかがほぼ決まります。

原価の明細は台帳と別シートに分ける

いちばん大事なコツです。台帳シートには工事ごとの集計値だけを置き、「いつ・どの工事に・何の費用がいくら」という明細は、別シートに1行ずつ縦に積んでいきます。台帳側はSUMIF関数(またはSUMIFS)で「工事No×費用区分」の合計を拾う形にします。こうすると、明細が何百行に増えても台帳の形は崩れず、日々の入力は「明細シートに1行足すだけ」になります。

明細を1か所に積んでおく利点はもうひとつあります。「今月は外注費が膨らんでいないか」「材料費の比率が上がっていないか」といった区分別・月別の集計も、同じ明細から数式で作れることです。台帳のためだけでなく、あとから数字を切り出す土台になります。

条件付き書式で「見なくても気づける」ようにする

粗利がマイナスになったらセルを赤く、原価が実行予算を超えたら黄色く塗る——条件付き書式を設定しておくと、台帳を開いた瞬間に問題のある工事だけが目に飛び込んできます。数字を1行ずつ読んで異常を探すのではなく、色が付いたところだけ確認すればよくなります。入金予定日を過ぎた未入金にも同じ仕掛けが有効です。

入力欄と計算欄をはっきり分ける

手で入力してよいセルと、数式が入っているセルの色を分けておきます。地味ですが、後述の「数式が消える」事故をかなり減らせます。

実行予算の立て方——赤字に「終わってから」気づかないために

台帳の項目の中で、いちばん形骸化しやすいのに、いちばん効くのが実行予算です。「工事が終わって集計したら赤字だった」という失敗は、原価を記録していなかったからではなく、比べる基準(予算)を最初に決めていなかったことで起きます。立て方はシンプルで構いません。

  • 受注額から目標粗利を引いた額が、原価の上限:例えば受注1,000万円・目標粗利20%なら、実行予算は800万円です
  • 4区分(材料・労務・外注・経費)に配分する:見積の内訳をベースに、区分ごとの予算に割り付けます。精度は粗くても、区分ごとに持つことが大事です
  • 着工前に台帳へ入れる:発注や手配を始める前に入力します。着工後に入れた予算は、実績に引っ張られて基準になりません
  • 実績と並べて、超過を色で見る:区分ごとの「予算残」を数式で出し、マイナスに近づいたら黄色→超過で赤。工事の途中で気づければ、追加工事の交渉や手配の見直しで打てる手が残っています

労務の予算を、去年の単価のまま置かないでください。公共工事設計労務単価は14年連続で上がっており、令和8年3月適用分は全国全職種の単純平均で前年比+4.5%でした。ただしこれは平均で、実際は職種と都道府県によって−0.7%から+12.2%まで開きます。自分の職種・自分の県が何%上がったかは、労務単価ウォッチで引けます(無料)。改正建設業法により、国が勧告する標準労務費を下回る契約はダンピングと見なされ、建設Gメンの監査対象になります。予算を組む前に確認しておくと安全です。

月末の締めでまとめて入力する運用だと、この「途中で気づく」が機能しません。原価明細は発注・請求書が来たタイミングで都度入力する——台帳の価値の半分は、この運用習慣で決まります。

手作りの工事台帳でよくある失敗

これまで何社かのエクセル台帳を見せてもらいましたが、つまずき方はだいたい共通しています。作り始める前に知っておくと避けやすいので、代表的な3つを挙げます。

  • 1シートに全部書いてしまう:工事情報も原価明細も入金も1枚に横へ横へと足していくと、数か月で列が増えすぎて誰も読めなくなります。前述の「明細は別シート」で防げます
  • 数式が消える:行のコピーや削除の拍子に集計式が壊れ、気づかないまま誤った粗利を見続けてしまうパターン。入力欄と計算欄の分離と、シート保護である程度防げます
  • 作った人しか触れない(属人化):凝った作りにするほど、作成者が休むと更新が止まります。使い方をシートの中に書いておくだけでも違います

まず無料の簡易版で試せます(登録不要・そのままダウンロード)

この記事で説明した「工事1件=1行」の台帳を1シートに絞った簡易版です。粗利・粗利率の自動計算と、粗利率15%未満の赤表示だけ入っています。まず自社の工事を3件入れてみてください。

工事台帳 簡易版(Excel・無料)をダウンロード

原価明細の自動集計・区分別集計・ダッシュボード・入金遅延アラートが必要になったら、下の製品版(¥3,000)へ。

作り置きのテンプレートを用意しました

ここまでの内容を自分で組めば、工事台帳は自作できます。無料ダウンロードのひな形を探すのも一つの方法ですが、無料配布のものは1シート完結が多く、原価明細が増えたときに崩れがちです(よくある質問でも触れます)。SUMIFの設計や条件付き書式の設定にはそれなりに時間がかかるので、この記事の構成をそのまま形にしたテンプレートを作りました。

  • 全6シート構成:ダッシュボード/使い方/工事台帳/原価入力/入金管理/区分別集計
  • サンプル5工事分のデータ入り:まず動きを見てから、自社の工事に置き換えられます
  • マクロ不使用のxlsx形式:標準的な関数のみで、中身はすべて確認・修正できます
  • 条件付き書式は設定済み:赤字工事は赤、実行予算の超過は黄、入金遅延は赤で警告します
  • ¥3,000の買い切り:月額費用はありません

ひとつ注意点として、このテンプレートは建設業法で定められた営業所備付けの帳簿そのものではなく、社内の原価・粗利管理用です。法定帳簿は別途、要件に沿って備え付けてください。

🔔 台帳を「開いて確認する」のをやめる方法もあります

上の台帳は、開けば赤い行で分かる形です。ただ現場が忙しい月は、開くこと自体を忘れます。そこで、台帳を毎晩自動で見て、入金予定日を過ぎた工事・粗利率が15%を切った工事があった日だけLINEに知らせる設定代行をしています。何も無い日は鳴りません。いまお使いの台帳にそのまま設定します(買い切り・月額なし)。

工事台帳みはり番を見る → ¥19,000・設定代行込み

システム化を考えるタイミング

エクセルの工事台帳は、工事件数が月に数件〜10件程度、入力する人が1〜2人のうちはよく機能します。一方で、進行中の現場が常時20件を超える、複数人が同時に更新したい、原価データを請求書や日報とつなげたい——こうなってくると、エクセルでは転記と確認の手間が膨らんでいきます。その段階の考え方は、工事台帳をExcelからシステム化する方法で詳しく書いています。まずはエクセルで運用を固め、限界が見えてからシステム化する、という順番で十分です。

よくある質問

Q. エクセルとシステム、どちらで管理するのがいいですか?
工事件数が月10件程度まで・入力者が1〜2人ならエクセルで十分です。件数と関係者が増えて転記や集計待ちが目立ってきたら、システム化を検討する目安です。

Q. 無料テンプレートとの違いは何ですか?
無料のものは1シート完結の一覧表が多く、原価明細と台帳が分かれていないため、明細が増えると崩れがちです。本テンプレートは明細入力と台帳を分けてSUMIFで自動集計し、赤字・予算超過・入金遅延を条件付き書式で知らせる構成で、サンプル5工事分のデータも入っています。

Q. どのExcelバージョンで動きますか?
マクロを使わないxlsx形式で、標準的な関数のみで構成しています。Excel 2016以降およびMicrosoft 365での動作を想定しています。

Q. 工事台帳の記入例はありますか?
本記事の「工事台帳の記入例——1行ずつ、何をどう書くか」で、工事台帳シート・原価入力シート・入金管理シートの3枚について、実際の値を入れた記入例を載せています。工事No・受注額・実行予算は手入力、原価計と粗利は数式、という区別も併せて書いています。

Q. 工事台帳のサンプルはありますか?
本記事のサンプル画像で完成形をご確認いただけます。実際に入力して動きを試したい方はブラウザで触れる工事台帳デモを公開しています。またテンプレート本体にも架空の5工事分のサンプルデータが入っており、消してそのまま使い始められます。

📋 そのシステム化、助成金の対象になるかもしれません

業務改善助成金は、最低賃金の引上げに合わせて生産性向上のための設備投資をすると、その費用の一部が助成される制度です。業務システムやソフトウェアの導入も対象になり得ます。2026年9月1日受付開始、締切は都道府県ごとに異なり、準備は8月中が目安です。対象判定5問と逆算スケジュールをまとめたA4・4ページのチェックシートを無料でお配りしています。

無料でダウンロード →メールアドレスのみ・登録不要

2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策が事業主の義務になります。 労働者を1人でも雇っていれば対象で、中小企業の猶予期間はありません(改正労働施策総合推進法)。 方針の策定・周知、相談窓口の設置、対応記録の整備などが求められます。

何をすればいいか、5つの措置に整理しました →

まとめ

工事台帳は、工事No・受注額・実行予算・原価4区分・粗利・入金の6点がそろえば成立します。エクセルで作るなら「明細は別シートに積んでSUMIFで集計」「条件付き書式で赤字と予算超過を色で知らせる」の2つを押さえるだけで、手作りの台帳より格段に長持ちします。自分で組む時間が取れない方は、この構成をそのまま形にしたテンプレートもご活用ください。

📦 この記事の内容を「買ってすぐ使える形」にしました
工事台帳Excelテンプレート(¥3,000・サンプル入り) — 原価明細を入れるだけで、工事別の粗利率・予算対比・未入金が自動で見えます。カード決済後すぐダウンロードできます。

賃上げを予定している会社は、台帳のシステム化費用が業務改善助成金(生産性向上の設備投資等が対象・令和8年度は9月1日受付開始)の対象経費に該当する場合があります。締切は県の最低賃金発効日の前日です。

工事台帳、システム化もできます。

エクセルで限界を感じたら、原価・進捗・入金を一元管理する業務システムへ。御社の運用に合わせて作り込みます。

無料で相談する →
© Khorai / あらゆる分野の業務を、データとAIで仕組みに。 会社サイト・記事一覧