給与の締め日が20日の会社で、最低賃金が10月1日に上がる。この場合、9月21日から10月20日までの1か月分の給与を、どちらの最低賃金で確かめればいいのか。答えは、締め日ではなく発効日で区切ります。9月21日〜30日の分は改定前、10月1日〜20日の分は改定後の最低賃金と比べます。
「締め期間の途中だから、翌月の締めから上げればいい」は間違いです。この記事では、締め期間の途中で上がる月の確かめ方を、時給の人と月給の人に分けて、Excelの実際の画面で説明します。

自分の県がいつ上がるかは、47都道府県の発効日を日付順に並べた一覧にまとめています。10月1日に上がるのは15都府県、いちばん遅い沖縄は12月2日です。
結論:締め日ではなく、発効日で区切る
厚生労働省の最低賃金制度のQ&Aには、発効日が賃金算定期間の途中にある場合の答えが載っています。要点は、発効日以降の労働には、改定後の最低賃金額以上を払う必要があるということです。締め期間の途中であることは、翌月まで待つ理由になりません。
20日締めで10月1日に上がる県なら、10月分の給与(9月21日〜10月20日)は次のように分かれます。
- 9月21日〜9月30日に働いた分:改定前の最低賃金と比べる
- 10月1日〜10月20日に働いた分:改定後の最低賃金と比べる
末締めの会社なら、10月1日発効の県ではちょうど10月分から切り替わるので、区切る必要はありません。区切りが要るのは、締め日が月末以外の会社と、発効日が1日以外の県です。今年は47都道府県のうち26府県が、月の1日以外の日に上がります。10月3日に上がる県が5つ、10月4日が3つなど、数日ずつずれて上がる県が多くあります。この26府県では、末締めの会社でも、10月分(または11月分、12月分)の給与の途中で最低賃金が変わります。
時給の人:発効日より後の時間だけ、改定後と比べる
上の画面は、埼玉県(10月1日から1,141円→1,196円)で、20日締めの会社の例です。
Aさん:時給1,150円
9月21日〜30日の32時間は、改定前の1,141円を上回っているので問題ありません。10月1日〜20日の64時間は、改定後の1,196円を46円下回ります。不足は46円×64時間=2,944円です。
Cさん:時給1,141円
改定前の最低賃金とちょうど同じ時給です。10月1日からは55円足りなくなり、72時間で3,960円の不足になります。
4人のうち3人が10月分で下回り、合計は7,672円でした。金額は小さく見えますが、これは払わなければならないお金で、払わなければ法律違反になります。
いちばん簡単なのは、締め期間の初日から上げること
発効日で時間を分ける計算は、給与ソフトによっては手作業になります。手間を省くなら、発効日を含む締め期間の初日(この例では9月21日)から、時給を改定後の額以上に上げてしまう方法があります。
余分にかかるのは、発効日より前の時間分の差額だけです。Aさんなら、32時間×46円で1,472円。区切りを間違えるリスクと、時間を分けて集計する手間を考えると、多くの会社ではこちらのほうが安くつきます。
月給の人:時間額に直してから比べる
最低賃金は時間額で決まっているので、月給の人はそのまま比べられません。厚生労働省が示している式は次のとおりです。
月給 ÷ 1か月平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
1か月平均所定労働時間は、年間の所定労働日数×1日の所定労働時間÷12で出します。年間250日・1日8時間なら、2,000時間÷12で約166.7時間です。

Eさん:月給195,000円でも下回る
基本給195,000円、年間所定労働日数250日、1日8時間。時間額にすると1,170円で、改定後の1,196円を下回ります。月給が20万円近くあっても、休みが少なく所定労働時間が長い会社では、こうなることがあります。
1,196円を満たす月給は、1,196円×2,000時間÷12で199,333.3円なので、199,334円以上です。今より4,334円上げる必要があります。
Fさん:同じくらいの月給でも問題ない
基本給185,000円と職務手当15,000円で、合わせて200,000円。年間240日なので1か月平均は160時間で、1,250円になります。職務手当は、毎月決まって払われる基本的な賃金なので、計算に入れます。
EさんとFさんの月給は5,000円しか違いませんが、年間の所定労働日数が10日違うだけで、判定が分かれます。月給の額だけ見て「うちは大丈夫」と判断しないことが大切です。
計算に入れてはいけない手当
最低賃金と比べるのは、毎月支払われる基本的な賃金だけです。厚生労働省は、次の賃金を除いて計算するとしています。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 所定労働時間を超える労働に対して支払われる賃金(時間外の割増賃金など)
- 所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日の割増賃金など)
- 午後10時から午前5時までの労働に対する賃金のうち、通常の賃金を超える部分(深夜の割増賃金など)
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
画面のGさんが、この落とし穴の例です。基本給180,000円だけなら1,102円で下回りますが、通勤手当と皆勤手当の20,000円まで足すと1,224円になり、「OK」に見えてしまいます。通勤手当と皆勤手当と家族手当は、どれだけ出していても最低賃金の計算には入りません。
残業代も同じです。残業が多くて手取りが多い人でも、所定労働時間の分だけで比べます。
9月30日までにやること
10月1日に上がる15都府県では、残りは1週間です。次の順に確かめると、漏れが出にくくなります。
- 自分の県の発効日を確かめる:県によって10月1日から12月2日まで違います
- 発効日が締め期間のどこに来るかを見る:月末締め以外なら、10月分(または11月分)の給与が発効日をまたぎます
- 全員を時間額にそろえる:時給の人はそのまま、月給の人は1か月平均所定労働時間で割る。入れない手当は外す
- 下回る人の新しい額を決める:締め期間の初日から上げるか、発効日から上げるかも決める
- 給与ソフトの単価を変える日を確かめる:ソフトの変更日を締め期間の初日にしていると、区切りを入れたつもりで入っていないことがあります
- 本人に新しい額を伝える:変更後の賃金を書面で渡しておくと、あとで食い違いが起きません
パート、アルバイト、学生、契約社員も対象です。最低賃金は、雇用の形や年齢に関係なく、その県の事業場で働くすべての労働者に適用されます。
過ぎてから気づいたら
発効日を過ぎてから、最低賃金を下回っていたと気づくこともあります。そのときは、下回っていた期間の差額を、すぐに支払います。厚生労働省のQ&Aでも、差額を速やかに支払う必要があるとされています。
最低賃金額以上の賃金を支払わない場合は、最低賃金法違反として50万円以下の罰金の対象になります。気づいた時点で、いつから、誰に、いくら足りなかったかを計算し直して、次の給与で精算するのが現実的な対応です。上の画面の「不足額」の列は、そのまま精算額の計算に使えます。
業務改善助成金を使うなら、締切は発効日の前日
最低賃金の引き上げに合わせて設備投資をする中小企業向けに、業務改善助成金があります。申請期限は、発効日の前日と11月30日の早いほうです。10月1日に上がる県では、9月30日が締切になります。
要件と注意点は業務改善助成金は自社が対象かに、県ごとの締切は発効日の一覧に載せています。
毎年この確認をしなくて済む形にする
最低賃金は毎年上がります。そのたびに全員の給与を電卓で時間額に直していると、確認するだけで半日かかります。
上の2つの画面は、社員名簿に「給与の形」「時給または月給」「入れる手当」「入れない手当」「年間所定労働日数」を持たせておけば、最低賃金の額を1か所書き換えるだけで全員の判定が出る作りです。来年は、改定後の額と発効日を入れ替えるだけで済みます。書き写す仕事を減らし、判断だけを人に残す。Khoraiが作っているのは、こういう仕組みです。
この記事で使っているチェック表は、最低賃金チェック表(令和8年度・47都道府県入り)としてそのままお渡ししています(3,000円・Excel 1ファイル)。都道府県を選ぶと改定前後の額と発効日が入り、時給・日給・月給が混ざっていても、下回る人が赤く出ます。
よくある質問
発効日が締め期間の途中なら、翌月の締めから上げてもいいですか?
いいえ。発効日以降に働いた分は、締め期間の途中であっても改定後の最低賃金額以上を払う必要があります。区切るのは締め日ではなく発効日です。
月給の人も最低賃金を確かめる必要がありますか?
あります。月給を1か月平均所定労働時間で割って時間額に直し、最低賃金と比べます。年間の休みが少ない会社では、月給20万円近くでも下回ることがあります。
通勤手当や皆勤手当は含めてもいいですか?
含めません。精皆勤手当、通勤手当、家族手当は、最低賃金の計算から除きます。残業代、休日や深夜の割増分、賞与、臨時の手当も除きます。
最低賃金を下回っていたことに後から気づいたら?
下回っていた期間の差額を、すぐに支払います。支払わない場合は、最低賃金法違反として50万円以下の罰金の対象です。
パートやアルバイトも対象ですか?
対象です。雇用の形や年齢に関係なく、その県の事業場で働くすべての労働者に適用されます。
まとめ
- 最低賃金が締め期間の途中で上がるときは、締め日ではなく発効日で区切る
- 時給の人は、発効日より後の時間を改定後の額と比べる。締め期間の初日から上げてしまうのがいちばん簡単
- 月給の人は、月給÷1か月平均所定労働時間で時間額に直してから比べる
- 通勤手当・皆勤手当・家族手当・残業代は計算に入れない
- 過ぎてから気づいたら、差額をすぐに払う
出典:厚生労働省「最低賃金制度」(対象となる賃金、最低賃金のチェック方法、Q&A)、同「令和8年度 地域別最低賃金 答申状況」(2026年9月23日取得)。具体的な判断は、管轄の労働基準監督署または社会保険労務士にご確認ください。