ブログ
記事一覧開発を相談する
2026-07-31(2026-09-26 更新)

カスハラ対策の義務化、中小企業は何をすればいい?|2026年10月1日施行・必要な5つの措置と「記録」の残し方

10月1日の義務化まで、あと—日。方針・窓口・記録の3点が動いていれば土台になります。記録の型を先に用意したい方は 記録・証跡キット(¥9,800) をどうぞ。

2026年10月1日から、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策がすべての事業主の義務になります。改正労働施策総合推進法にもとづくもので、労働者を1人でも雇っていれば対象、中小企業の猶予期間はありません。「大企業が先で、中小は数年後」という段階施行ではなく、全事業主が同じ日から対象になる点が、これまでのハラスメント法制と大きく違います。この記事では、何を求められるのか、実務では何から手を付けるべきかを、中小企業の目線で整理します。

そもそも「カスハラ」とは何を指すのか

厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第51号)では、顧客・取引先などからの言動のうち、①社会通念上相当な範囲を超えたもので、②それにより労働者の就業環境が害されるもの、が対策の対象とされています。ポイントは、クレームすべてがカスハラではないことです。商品やサービスへの正当な指摘・要望は含まれません。対象になるのは、暴言・威圧・土下座の要求・長時間の拘束・執拗な繰り返し・SNSでの晒しといった、手段や態様が相当性を欠く行為です。

この線引きを社内で共有すること自体が、対策の第一歩になります。「お客様は神様」で我慢させる時代は、法律のうえで終わりました。

定義は3つの要素で決まります

2026年10月1日から施行される確定指針では、カスタマーハラスメントを次の3つを満たすものとしています。

  1. 顧客等の言動であること
  2. その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えたものであること
  3. それにより労働者の就業環境が害されること

「顧客等」は、レジの前にいる人だけを指しません。顧客、取引の相手方、施設(駅・空港・病院・学校・福祉施設・公共施設等)の利用者、その他その事業に関係を有する者が含まれ、今後商品を購入したりサービスを利用したりする可能性がある者も対象になります。

ここは実務上、かなり広いと考えておいたほうがいいところです。取引先の担当者からの言動も、まだ買っていない見込み客からの言動も、入り得ます。

記入例:どこからが「範囲を超えた」なのか

3要素を読んでも、現場では線が引けません。判断のイメージを持つために、場面を並べます。実際の判断は個別の事情によりますが、考え方の型は共通しています。

場面当てはまるか考え方
納品物が仕様と違うとして、根拠を示して繰り返し是正を求める該当しにくい要求の内容に理由があり、手段も社会通念の範囲内。クレーム=カスハラではありません
「誠意を見せろ」と言い、閉店後も3時間居座って担当者を帰さない該当し得る要求の手段が範囲を超えており、就業環境が害されています
電話で1回だけ強い口調で苦情を述べた個別判断一度の言動でも内容が著しい場合はあり得ますが、程度と継続性を含めて判断されます
SNSに担当者の実名を挙げ、事実と異なる内容を繰り返し投稿する該当し得る来店していなくても、事業に関係を有する者の言動として問題になり得ます

いちばん大事なのは1行目です。正当なクレームはカスハラではありません。内容に理由があり、伝え方が常識の範囲であれば、それは事業者が受け止めるべき申し出です。

分かれ目になるのは、要求の内容が妥当かと、要求を通すための手段が相当かの2つです。内容は正当でも、手段が長時間の拘束や人格攻撃であれば、②を超えます。逆に手段が穏やかでも、事実無根の要求を延々と繰り返せば③に至ります。

だから現場に配るなら、「こういう言葉が出たらカスハラ」というリストより、「内容」と「手段」を分けて書き留める記録の型のほうが役に立ちます。判断は後からでもできますが、記録は後から作れません。

事業主に求められる措置:大きく5つ

指針で求められる措置を実務目線でまとめると、次の5つです。

厚生労働省のリーフレット「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」では、事業主が必ず講じなければならない措置が10項目に分けて示されています。上の5つに入りきらない項目もあるので、並べておきます(2026年9月26日確認)。

  1. カスハラには毅然と対応し、働く人を守る方針を明確にして周知・啓発する
  2. カスハラの内容と、あらかじめ定めた対処の内容を周知する(管理監督者に指示を仰ぐ、できる限り1人で対応させない、犯罪に当たり得る言動は警察へ通報する など)
  3. 相談窓口をあらかじめ定め、周知する
  4. 相談窓口の担当者が適切に対応できるようにする
  5. 事実関係を迅速かつ正確に確認する
  6. 被害を受けた人への配慮の措置を行う
  7. 再発防止に向けた措置を講ずる
  8. 特に悪質なカスハラへの対処の方針をあらかじめ定めて周知し、対処できる体制を整える
  9. 相談者のプライバシーを守る措置を講じ、周知する
  10. 相談したこと等を理由に不利益な取扱いをしないと定め、周知・啓発する

太字の3つは、上の5つのまとめでは見えにくい項目です。とくに8は、パワハラの措置にはなかったカスハラ独自の項目なので、方針の紙に「警告・出入り禁止・警察への通報」などの対処を一文入れておくと漏れません。

罰則(刑事罰)は直接ありませんが、措置を講じていない場合は行政の助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合は企業名公表の対象になり得ます。加えて実務上は、対応を怠って従業員が心身を害した場合の安全配慮義務違反(民事)のリスクの方が重いと考えるべきです。

🛡 記録の様式は、作ってあります

5つの措置のうち「記録」の部分は、書式を先に決めておかないと現場が書けません。日時・対応者・発言内容・対応・引き継ぎまで、その場で埋められる記録様式と、どこから上長へ上げるかの対応手順をセットにしたキットを用意しています。研修用の資料もついています。

記録・証跡キットを見る → カード決済・購入後すぐダウンロード

実務の核心は「記録」です

記録が無いとどうなるかは、他の制度の処分事例が具体的です。技能実習の認定取消8者の理由を全部読んだ記事では、最も多くの計画を失った1者の理由が「虚偽の帳簿書類の提示」でした。

5つの措置を眺めると、方針・窓口・配慮・再発防止と項目が並びますが、実務の核心はひとつに集約されます。「やっていることを、後から証明できるか」です。

方針を作っても、周知した記録がなければ「周知していない」と評価されかねません。相談に丁寧に対応しても、記録がなければ行政調査や紛争の場面で説明できません。逆に言えば、記録の仕組みさえ最初に作ってしまえば、日々の運用は「起きたら書く」だけになります。

対応記録に残すべき6項目

難しい様式は不要です。1件につき、次の6項目が残る形にしてください。

紙のノートでも成立しますが、紙は「書いたのに見つからない」「集計できない」で破綻しがちです。スプレッドシート等で入力したら日付付きで残る形にしておくと、発生から責任者確認までの流れがそのまま証跡になります。

実際にどう動くのかは、ブラウザで触れるデモを用意しました。対応記録・周知証跡・研修記録・マニュアル生成の4つを、実際に操作して確かめられます。デモと同じ仕組みを自社のGoogleアカウントで使える形にしたものは、記録・証跡キット(¥9,800・買い切り)として販売しています。

10月1日までの準備手順(4ステップ)

作業量は実はそれほど多くありません。順番にやれば、この4ステップで土台ができます。

マニュアルの整備や研修は、この土台の上に載せていくものです。まず「方針・窓口・記録」の3点を10月1日までに揃えることを優先してください。

東京都の事業者は:条例と奨励金も知っておく

東京都には、国の義務化に先行してカスタマー・ハラスメント防止条例があります。また、都内の中小企業(常時雇用300人以下)向けに、マニュアルの作成や実践的な取組を行った事業者を対象とする奨励金制度(カスタマーハラスメント防止対策推進事業・企業向け奨励金、定額40万円)が実施されています。令和8年度は事前エントリー制(超過時は抽選)で、第1回の受付は終了、次回の日程は公式の特設サイトで発表されます。

ここで見落とされやすいのが、マニュアルを作っただけでは要件を満たさないという点です。募集要項は、マニュアルの作成・周知に加えて「実践的な取組」を1つ以上実施することを求めています。挙げられているのは次の3つです。

つまり「マニュアル+この3つのどれか」がセットです。マニュアルのひな形を整えるだけで申請できると考えていると、後で足りないことに気づきます。またマニュアル側にも、必須項目をすべて含むこと、条例に言及していること、社内に周知していることという条件が付きます。

要件や提出書類は年度・回次で変わるため、検討する場合は必ず公式の募集要項(東京しごと財団)を確認してください。なお、この制度では提出書類としてマニュアルの作成日が確認できる文書と周知日が確認できる資料(掲示写真やメールのスクリーンショット)が求められます。「日付付きで記録を残す」仕組みの価値は、義務化対応と奨励金申請の両方で共通しています。

よくある誤解

まとめ

2026年10月1日から、カスハラ対策は全事業主の義務になります。求められるのは、方針の明確化と周知、相談体制、適切な対応と記録、被害者への配慮、再発防止の5つ。そして実務の核心は「後から証明できる記録」です。方針・窓口・記録の3点セットなら、小さな会社でも数時間で土台が作れます。秋は最低賃金の改定やインボイスの控除率変更も重なる時期(10月1日に変わる4つの制度のまとめ)で、事務の手が足りなくなりがちです。完璧を目指すより、まず方針・窓口・記録の3点を決めてください。10月1日を過ぎてしまった場合も、この3点から始められます(順番はカスハラ対策、10月1日に間に合わなかったらに書きました)。

※本記事は2026年7月31日時点の公表情報にもとづき、2026年9月26日に厚生労働省のリーフレット(措置の10項目)を確認して更新した一般的な解説であり、法的助言ではありません。制度の詳細は厚生労働省・東京都の一次情報をご確認ください。個別の判断が必要な場合は専門家にご相談ください。

「起きたら書くだけ」の記録の仕組み、作れます。

方針の周知記録から、発生→対応→責任者確認まで一本でつながる対応記録まで。紙とバラバラのファイルから卒業する仕組みを、御社の業種・規模に合わせて作り込みます。データは御社のGoogleアカウント内で完結し、当社は個人情報を預かりません。

無料で相談する →
© Khorai / あらゆる分野の業務を、データとAIで仕組みに。 会社サイト・記事一覧